ファッションシェアー

スカイライトコンサルティング株式会社が主催するビジネスプランコンテスト「起業チャレンジ2010」で最優秀賞を獲得していた「4次元クローゼット」(http://www.4d-closet.net/)が、2月2日、本格運営を開始した。
提供するのは、ファッションに特化したシェアリングサービス。ブランドバッグやドレスなどをレンタルするサービスはこれまでにもあったが、ユーザー同士で洋服や靴、アクセサリーなどを“シェアリング”するサービスは日本初だという。

“みんなで作る”クローゼットだから、会員が増えるほどアイテムも充実する
「4次元クローゼット」は“みんなで作る”をコンセプトとするウェブ上のクローゼットだ。そのため、利用には会員登録とともに自らのアイテムを持ち込むことが条件となっている。登録料や保管料、レンタル料などはなく、ユーザーは1アイテムにつきクリーニング代525円と往復の送料を負担するだけで、アイテムを使用できる。レンタル期間は、アイテムが到着した日から返却発送した日までの2週間。現在は、メンズシューズのみの展開だが、今後、メンズのボトムスやアウターなども順次追加していく予定だという。

「“ファッションシェア”の醍醐味を体験していただくために、まずは当社で用意したメンズシューズ約60足でスタートしています。現在は『おためし会員登録』キャンペーン中で、アイテムの持ち込みなしで1週間のシェアを行っています。今は、まだサービススタート直後で本会員の登録はないのですが、今後、会員が増えていくにつれてアイテム数も増えて、クローゼットの中身が充実していきます。僕たちは、単にアイテムを借りて使うというだけのサービスではなくて、「4次元クローゼット」を通じてファッションをより楽しむための新しい形を提供していきたいと考えています」

ユーザーから持ち込まれたアイテムは、市場価値や人気、状態などから同社が独自に算出したポイントでランク付けされる。現在のランクは、AからFまでの6段階。ユーザーは持ち込んだアイテムで獲得したポイントの累計で、どのランクのアイテムまでシェアできるかが決まるのだ。

「アイテムポイントはクローゼット内を公平に保つための仕掛けです。ポイントは固定ではなくて、持ちこんだアイテムがシェアされた回数に応じて獲得ポイントがアップしていく機能を、近々追加する予定です。また、今月中には、ユーザー同士が繋がっていけるようにTwitterFacebookとも連動したサービス画面に作り変えていきます。ファッション好きが集まるコミュニティというのは、他のウェブサービスにもありますが、自らが持ち込んだアイテムというリアルな物が介在することで、より濃密なコミュニケーションが生まれてくるのではないかと期待しています」


同社メンバー同士の洋服の貸し借りから発案し、ビジネスコンテストで優勝
“ファッションシェア”というサービスのアイディアは、同社創設メンバーの3人が学生時代に洋服の貸し借りをしていた体験が元となっている。

「洋服には興味があるけれど、ひとりで購入できる枚数は限られるので、ジャケットなどをお互いに貸し借りしていたのです。そのやり取りを、ネットを使って無限に広げていったら面白いのではないかと思ったのがすべての始まりです。ちょうど、就職活動時期でもあって3人とも将来を模索していたのですが、このアイディアを試してみたい、世の中に出してみたいという思いが強くなって、『起業チャレンジ』というコンテストに応募しました」

「起業チャレンジ」は、スカイライトコンサルティング株式会社が主催する20代の若い世代を対象としたビジネスプランコンテストだ。原則1年以内に起業する意思があることが応募条件となっており、受賞チームには300万円を上限とする起業支援資金の提供と、受賞後のサポートが約束される。

「4次元クローゼット」は、「起業チャレンジ2010」において最優秀賞を受賞。起業支援金として100万円を獲得している。

「『起業チャレンジ』では、第二次審査通過後にビジスプランをブラッシュアップさせるための期間が約1ヶ月間設けられています。コンサルタントの方と1週間に1回程度のミーティングを重ねながら、より現実的な計画へと落とし込んでいくのですが、この期間のやり取りが僕たちにとっては本当に勉強になることばかりでした。もともと僕たちが提出していたプランは“ファッションシェア”というアイディアを試してみたいという思いだけを綴ったようなものだったのです。コンサルタントの方のアドバイスがあったおかげで、より現実的なサービスをイメージできるようになりました」

当初のプランでは、実店舗を構えながら、ウェブでもサービスを展開するという形を考えていたという。アイテムを保管するために場所が必要なことと、実際に商品を確認してすぐに持ち帰ってもらえるというユーザーの利便性を考えてのことだった。しかし、実店舗の維持・運営費が事業資金を圧迫するというコンサルタントのアドバイスで、ウェブに特化したサービスでスタートすることにしたという。

「将来的に店舗を持つことはあるかもしれませんが、まずは“ファッションシェア”という新しいサービスをひとりでも多くの人に利用してもらうことが肝心だと気づいたのです。限られた人にしかリーチできない実店舗を優先するよりも、今はウェブに特化して、ソーシャルメディアの伝播力も活用しならが“ファッションシェア”の魅力をより多くの人に広めていきたいと考えています」


“ファッションシェア”サービスが確立すれば、新たな事業展開も見えてくる
「起業チャレンジ2010」の最終選考会が行われ、受賞チームが選出されたのは2010年1月19日。一方、同社の設立は2011年1月で、「4次元クローゼット」の本格運営がスタートしたのは、2月に入ってからだ。受賞から会社設立までの約1年間、3人はどんな準備をしてきたのだろうか。

「それぞれの担当を決めて『4次元クローゼット』のサービス実現に必要な知識や技術を習得するために動いてきました。スカイライトコンサルタントの担当の方とは、定期的にミーティングを重ねて、ビジネスプランをより現実的なものに落とし込む作業も続けてきました」

ウェブサイトのシステム構築はもちろん、持ち込まれたアイテムのクリーニングに関しても、外注はせずに、設備を用意して同社内で行っているという。

クリーニング屋じゃないかと言われてしまったりもするのですが、実は、今のところ当社に入ってくるお金は会員からお支払い頂くクリーニング料金のみになります。もちろん、将来的には、ファッションシェアだけではなくて、レンタルやリアルな試着サービスといったことも展開していきたいと考えています。それが実現すれば収入の幅も広がります」

「4次元クローゼット」はアイテムの持ち込みが利用条件になっていることもあり、ファッションにかなり興味のあるユーザーが集まってくることが想定される。そうしたときに、アパレルブランドと提携することで、一定期間アイテムを貸し出して、普段の生活の中で試着してもらい、納得したら購入できるサービスを考えているという。

「あくまでも構想段階で具体的に動いているものではありませんが、会員が一定数集まれば、そうしたサービスにも挑戦していきたいと考えています。今はとにかく、当社のコアのサービスとなる“ファッションシェア”の認知を広めて、ひとりでも多くの方にご利用いただけるように努めていきます。運営費を賄うためには、300人に月2回程度利用してもらう必要がありますが、夏までに会員500人を獲得したいと考えています」

“ファッションシェア”のアイディアを実現するために、靴のクリーニングについても学び、同社内で行っているというのが驚きだった。ファッションに興味のある10〜20歳代の男性にどれだけたくさんアプローチできるかが同サービスの成功のカギになるだろう。現在は、アイテムの持ち込みなしで1週間利用可能な「お試し会員登録キャンペーン」を実施しているが、この他に、友達を紹介するとクリーニング料金が期間限定で無料となる「お友達紹介キャンペーン」なども企画して、会員登録の拡大に繋げたいということだった。今後、どれだけ会員数を伸ばすことができるのか注目していきたい。