今を生きる

今回の地震でお亡くなりになられた方々のご冥福、及び、被災された方々の生活が一日も早く元に戻ることを心よりお祈り申し上げます。

今回の大惨事は悲痛の極みであります。そして、この出来事で「人はいつ死ぬかわからない」という当たり前の事実に改めて気付かされた人も多いはずです。もちろん「どうせわからないんなら、テキトウに生きたいなあ」と思う人もいるでしょう。それも一つの人生です。しかし「自分がいつまで生きていられるかわからない」と気付いた人の中から、「それなら、自分が信じることを思いっきりやってみたい」と考えるようになる人も現れるのではないでしょうか。

スポーツ報知の 3月15日の記事「三木谷会長『開幕どころじゃない』復興が最優先…楽天」 によると、楽天三木谷浩史会長=写真=は、95年の阪神・淡路大震災で叔母夫婦を亡くし、被災地を歩き回り、「学校に安置された何百もの棺ひつぎを見て回った」という。

「人間の命がいかに簡単に奪われるものかを思い知った。未来は不確定だ。世界は無常 だ」と勤めていた興銀(日本興業銀行)を辞め、起業へと動いた。と、今の楽天株式会社を創業するに至ったとのことです。

ベンチャー企業は、「偶然」の力に大きく翻弄されることになります。誰もやったことないようなことをやるのがベンチャー企業なわけですから、計画通りに行く方が不思議だと言えるかも知れません。

「人間は、がんばれば、すべてのことを計画通りに進められる」
「ミスをするやつは、何か努力が足りない」
「大企業に就職して無難に働きさえすれば、人生は計画通りに進むはず」

といった世界観が大勢を占める社会では、大成功するか失敗するかわからないベンチャーにチャレンジすることがバカバカしく見えてしまいかねないわけです。

よく考えれば、いくら人間ごときが将来の計画をしても、自分の努力を超えた大きな力によってそれが根底から覆されてしまう可能性があることは当たり前なのですが、平時はつい、目先にある「人が造りし秩序」だけに目がいってしまうわけですね。

つまり、ベンチャー企業を立ち上げるにあたって最も重要なことは、創業する人の「世界観」なのではないかと思います。もちろん、企業を急成長させるマネジメントや、ビジネスのコアになる技術、会計や財務の知識などのテクニック的な要素も必要ではあります。

しかし、最も重要なことは、「これをやることがオレの(私の)人生にとってすごく価値があることなんだ」という信念や確信であり、「自分が今考えているサービスが普及した後の、大きく変わった世界の人々の生活」といった世界観なのではないかと思います。

もちろん、「自分が信じることを思いっきりやる」というのは、なにも自分が起業した会社を上場させることだけに限らなくてもいいわけです。

今働いている会社や役所が、自分が一番力を発揮できる場所だと考えるのであれば、そこで張り切って働くのもいいでしょう。ビジネスの領域だけでなく、NPOやボランティアで活躍するのもすばらしいことです。

創業者や社長にならずとも、幹部として、従業員として、また外部のアドバイザーとして、ベンチャー企業をはじめとする元気な会社に関わる方法もあります。

しかし、「1を10にする人」が重要であるのと同様、世の中には「0を1にする人」も必要です。そして今、日本に最も不足しているのは、この、「0を1にする人たち」、すなわち、今まで無かったものを新たに産み出して「未来を作り出す人たち」なのではないかと思います。

今回、「いつ死んでも悔いが残らないように生きよう」と思い始めた人の中から、「自分で新しいビジネスを起こして、思う存分、暴れ回ってみたい」と考える人が何人か現れる。そしてその人たちが、未来の社会を造り出す。
……そうなってくれたらいいなと、私は、ひそかに願っております。