見える化と見えない化のバランス

ここ数年、「見える化」と言う言葉がよく使われるようになりました。昨年は、流行語大賞の候補にも上ったほどです。今では、社会の仕組みの中に「見える化」が取り入れられるほどです。

本来は企業経営において、社内の情報を共有することを目的に、見える化が使われ始めました。わたしが見える化を初めて実感したのも、埼玉県の従業員50人ほどのITソフトメーカーが導入した時です。
04年のことですが、当時この会社は電器部品製造を中心に事業を行なっていました。ところが、部品を収めていた親会社が中国に工場移転を行なったため、一気に売上げが40%近く減少しました。

いつ倒産してもおかしくない状態のとき、社長が打ち出した改革案が全社的な見える化です。社内の会計をオープン化して、売上げから最終赤字額まで全ての社員が判るようにしました。
そのため従業員の誰もが、給与の減額を覚悟したそうです。そんな中から新規事業の必要性が全社的な課題になり、従業員の発案で生まれたのが不動産会社向けのITソフトです。
今では、無借金経営の優良企業に姿を変えています。お客さん向けに使用する食材の見える化をしている飲食店、診療方法を患者にわかりやすく見える化を進める病院など、わが国で見える化はますます広がりそうです。

起業の場合は、見える化より「見えない化」をいかに進めるかが、成功のポイントです。全ての事業内容が見えてしまう起業では、上手くいくと直ぐに人に真似されるのが現在の日本です。
何よりも、ライバル他社に勝つため、他には知られていない独自の技術や手法を自分のモノにしておく必要があります。そのためにも、見えない化のカードを何枚か見つけ、社内的にも隠しておくことです。

一方で、お客さんつくりのため見える化を進めながら、他方では、絶えず見えない化を進める独自の方法を考え続けることです。起業においては、絶えず細心の注意を払うことです。