時代の潮目をかえることこそブランド

ブランドについては色々な専門書から定義がなされていますが、デザイナーとして現場の経験値から考えてみました。

単に、優れた品質や機能を追求したり、流行を取り入れた外観にこだわったりする従来のようなものづくりからは、ブランドは生まれない。

そもそもブランドとは、企業や商品が消費者に伝えたいメッセージであり、目に見えないものである。言い換えれば、伝えたいメッセージのないところからブランドは生まれない。そして、伝えたいメッセージがあっても、的確に表現できなければ消費者には届かない。

経営者が思い描くメッセージを「可視化」して表現し、ブランドの構築につなげていく。これを担うのがデザイナー。すなわち、ブランドづくりにデザイナーの存在が欠かせません。

一般的にデザインとは、デザイナーの個性の表現だと思っている人が、まだまだ多いのが実情です。しかしデザインの最も大きな存在意義は、問題解決と考えます。クライアントから提示されたり、デザイナー自身が気づいたりした課題を、どうやってロジカルに解決していくか。これこそが、デザイナーにとっての至上命題です。

しかし伝統工芸の要素が、最新の科学技術を超えた何かを作り出せることもあります。問題解決ではなく、問題を提起するためのデザインと言えます。これもまた、デザイナーの大切な役割になります。

そのためには新しい素材や技術の開発が必要になることも多く、どうしてもコストがかかりますが、斬新な商品である以上は、元が取れるとは限りません。つまり「売れない」というリスクを認識しながら、時代の潮目を変えること、そこに挑むのがブランド足りうるのではないでしょうか。